おしゃれは理論で学ぶ!内面も外面も輝くファッションロジック(R)アドバイス パーソナルスタイリスト 土居コウタロウオフィシャルブログ

13話ラスト 今までは自分の為に、これからはみんなの為に。





俺は最近決心したことがある。

俺はもう一度、医者になるための勉強をしっかりやり直すことに決めたのだ。


俺は今まで、「成功者」だと思われたいためにだけに医大に入ったと思っていた。

でもスクールで学びながら、じっと自分の内側を見つめていると、
俺の心の奥に、「みんなを喜ばせたい」というシンプルで優しい気持ちが、
ちゃんとあるような気がしてきたのだ。



そのことを兄貴に報告すると、兄貴はこう言ってくれた。



「ええやん。お前はええお医者さんになれると思うで。
 お前には昔から、人の気持ちを明るくする力があるもん。

 なあ覚えてるか。

 中学校の頃、俺は近所のおじいちゃんおばあちゃんの手助けをしてたけど、
 俺が風邪をひいた時とかはお前が替わってくれたやろ。


 その後、必ず言われたもん。『祐二くんは今度いつ来てくれるの?
 祐二くんが来ると、歌を歌ってくれたり、
 お笑いの人の物真似をしてくれて楽しいのよ』って。


 俺、ずっと思っとった。
 ほんまに『相手へのおもてなし』が得意なのは、お前の方やってな」


  
兄貴にこんなふうに認められて、俺は本当に嬉しかった。
兄貴の言葉は、それからの俺をいつも励まし続けてくれている。



そして、兄貴は教えてくれた。



みんなを愛することは必ず自分に返ってくることであり、
そうやって自分が幸せになればなるほど、
さらにまわりの人たちを幸せにすることができるということを。





俺は兄貴を、心から尊敬している。

俺は最近、昔家族でよく遊んだ河原に行くことが多くなった。

河原で深呼吸すると、俺はのびのびし、鼻歌を歌いたくなるほど嬉しくなる。


そんな時俺は思い出す。
俺たち兄弟が同じ白いTシャツを着て、花火で遊んでいた頃のことを。

あの頃、兄貴は花火一本一本の美しさを静かに楽しみ、

俺は両手にそれぞれ違う花火を持ちながら、みんなを笑わせようと走り回っていた。



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「祐二、大人しくしなさい!」おかんは俺をたしなめたが、おとんは言った。

「ええやないか。祐二はみんなに喜んでもらえたら嬉しいんや。
 楽しくはしゃいでいつもみんなを明るくする、この子はそういう子や。

 反対に祐二は、一つ一つのことに丁寧に向き合う、誠実な子やな」



おとんは俺たち兄弟の良いところを、早くから見抜いてくれていたのだ。


あの頃の無邪気な感覚を忘れず、そのまま生きていけばいい。




そうすればきっと、俺も兄貴も迷うことなく、自分の幸せの方へと歩いて行けることだろう。





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俺の足元には緑が広がり、俺の頭の上には、果てしなく続く青い空が広がっている。

俺の未来には、どんな光景が広がっているのだろうか?


太陽の光が輝く方角に目をやると、
遠くの方から、シンプルなシャツを着て白い犬を連れた女性が、
ゆっくりと歩いて来るのが見えてきた。





                       (おわり)



最後までお読みいただきありがとうございます。

この物語は脚本家のだんぼさんに書いていただきました。

おしゃれスクールで実際に起こった出来事をお伝えし
ひとりひとりの人生として描いてくださっただんぼさんに
感謝いたします。


この内容はフィクションですが、
実際にスクールで起こったことが多分に含まれています。

今回のゆうじには私自身の体験が多く、
自分が学生の時に感じていた感覚が再現され
甘酸っぱい思い出が湧き上がります。


過去の経験も含めて今の人生がある。
そう思わせてくれる作品でした。

読んでいただいているあなたにも
なにかの心の響きがあれば幸いです。

感謝を込めて
| 「おしゃれスクール物語」 | 23:54 | comments(0) | - |
俺は「おしゃれは相手へのおもてなし」という意味が、だんだんわかってきたような気がした







俺は、いつもできるだけシンプルな服を着るよう心がけた。

そんな服を着ていると、面白い現象が起きた。





大学やバイト先などで、初対面の人に話しかけられる割合がぐっと増えたのだ。

俺も嬉しくなって、話しかけてくれた人とすぐに仲良くなってしまう。



前から俺のことを知っていた人たちも、
「そういう服の森崎くんもいいね。なんだか親しみやすくなった」と言ってくれた。


みじめさと寂しさによって空いていた俺の心の穴が、
みんなが寄って来てくれることによって、少しずつ埋まっていくのを感じた。











俺は「おしゃれは相手へのおもてなし」という意味が、
だんだんわかってくるような気がした。


そして、「相手へのおもてなしのおしゃれ」が成功すると、
なぜか、自分自身が一番幸せになることができるということを実感しはじめた。







それからしばらくたって、スクールの先生は、
「自分に一番似合う雰囲気の服」についても教えてくれた。




「祐二さんはもともと持っている顔だちや雰囲気がジャーニーズ系なんです。
 だから本当はシンプルなものより、可愛らしいファッションが
 一番お似合いになるんですよ。


 反対に、太一さんにはもともと、落ち着いていて大人っぽい魅力がおありになります。
 だから落ち着いたファッションをされると一番お似合いになるんですよ」と。





その頃には、俺も兄貴もシンプルな服をすっかり着こなせるようになっていたので、
今度は少しずつ、「自分に一番似合う雰囲気の服」に移行していくよう心がけた。


俺はおしゃれを学ぶことにだんだんと慣れてきた。

兄貴はもちろん、ますますおしゃれを楽しんでいるようだった。



こうして、俺と兄貴はどちらも自分の魅力に自信を持ち、
それぞれ自分らしいやり方で、自分の魅力を最大限に生かす方法を
身に付けることができたのである。




そして、俺ら兄弟が「おしゃれスクール」に通いはじめてから一年が過ぎた。



兄貴は今でも、百合子さんと仲良くお付き合いをしているらしい。

そろそろ結婚の話も出ているようだ。





兄貴はプライベートだけでなく、仕事も順調のようだ。



最初に兄貴にスクールのことを教えてくれた先輩のように、営業成績も上がったと言っていた。



正しいおしゃれをすることができると、人生全般が向上してしまうというのは、
どうやら本当だったらしい。




俺は先日、久しぶりにバンド活動に誘われ、ライブに出演した。



俺はこのところずっと、自分に一番似合う可愛らしい服を着るようにしていたのだが、
その日はライブだったので、以前のようなロックテイストな服を着た。



すると不思議なことに気が付いた。

以前と同じ服のはずなのに、なぜか前よりも似合ってしまったのだ。



おそらく、着こなせる服の幅が広がったということなのだろう。


俺は前よりもずっと、みんなから「かっこいい!」と褒められ、
ライブは大いに盛り上がった。





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みんなを楽しませることが大好きな俺の心は喜びに溢れ、
その日は俺にとって忘れられない、とても素晴らしい日になった。







13話ラストに続く・・・・

| 「おしゃれスクール物語」 | 23:53 | comments(0) | - |
普通の服を着たら自分が自分でなくなってしまう気がするんです!10話






「私は、いつかの授業で言ったことがありますよね。

 『男性のおしゃれの最初のステップは、
  まず誰の目から見ても好感度のある、
  シンプルで清潔感のあるアイテムに着慣れることです』
  って。


 それは、さきほどお話ししたように、そのような服を着ると、
 いろんな方に受け入れてもらいやすくなるからなんですよ」



「理論的にはとってもよくわかるんです」



だが俺の心にはまだ引っかかっていることがあった。



「よくわかるんですが、
 僕は、そんな普通っぽい服を着ることにすごく抵抗があるんです。

 もしそんな服を着たら僕は僕でなくなってしまうような気がするし、

 第一絶対に似合わないと思うんですが…」



 その時、スクールの扉が空いた。兄貴だった。


「おお祐二やないか!来とったんか」




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兄貴は俺を見て歓声をあげた。そして兄貴は俺の手を握り、
ぶんぶん振りながら大はしゃぎした。

そんな兄貴を見て、俺と先生は思わず吹き出してしまった。



兄貴はひとしきり大喜びした後で、ふと思い出したように聞いてきた。

「で、先生と何を話してんの?珍しいやん」

俺は兄貴に、自分がシンプルな服を着ることに抵抗があることを話した。

兄貴は能天気に言った。



「大丈夫やって。お前そういう服絶対似合うわ。なんせ元がいいからなあ。
 兄ちゃんが保証したる」


「兄貴が保証してくれても、嫌なもんは嫌やねん」



しかし兄貴は自信満々に胸を張り、こう言った。


「先生、俺に任せといてください。責任持って、祐二を変身させますから!」

「兄貴、張り切りすぎやって」



「なあ祐二、この授業終わったらすぐ服買いに行こ。
 兄ちゃん、すごくいいシャツ売ってる店知ってるねん!」


「うるさいわ。そこ、もともと俺が教えた店やろ?」


「あ、そうやった」



兄貴は子供のような無邪気な顏で笑った。





11話に続く・・・

| 「おしゃれスクール物語」 | 15:53 | comments(0) | - |
「実は僕最初にブログを拝見した時から先生のことがあまり好きじゃなかったんです」第9話










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俺は自分の机の中を探った。

そして引き出しの中から、
ずっと忘れていた「おしゃれスクール」のテキストをようやく見つけた。



俺は久しぶりにページを開いた。





「おしゃれは相手へのおもてなしです」

開いたページには、そう書いてあった。






次の週、俺は久しぶりに「おしゃれスクール」に行った。

長い間休んでいたお詫びをするため、
俺は誰よりも早くスクールに着いた。



その日は以前から俺が苦手だと思っていた
主催者の先生の授業だったので。

その先生が俺を迎えてくれた。




俺は先生にお詫びをした後で、こう言った。



「僕は今まで、兄貴を見下していました。
 兄貴はおしゃれを学ばないといけないかもしれないけど、
 僕はそんなもの学ばなくても
 やっていけると思ってました。

 でもわかったんです。
 僕はおしゃれだけでなくすべてにおいて、
 兄貴に負けているいうことが。

 僕は今、少しでも兄貴に追いつきたいと思っています。

 だからあらためて、スクールで学ばせていただきたいと
 思いました」



先生は言った。



「そう思えるようになられたのは素晴らしいことです。
 でもこれだけは忘れないでくださいね。

 祐二さんは、お兄さんと同じになる必要はないんです。

 祐二さんには祐二さんご自身の人生があり、
 才能や魅力があるんですから。

 お兄さんはご自分の魅力を見つけられて、
 それをコツコツと磨かれたので、


 どんどん良くなっていかれたんですよ」





俺は、ある時急に輝きだした兄貴の姿を思い出してうなずいた。

先生は続けた。




「大丈夫ですよ。祐二さんもすぐに、
 ご自分の魅力に気づかれます。

 そして祐二さんはきっとご自分のことを、
 もっともっと好きになられると思いますよ」



俺はここで突然ひらめくものがあった。

そこで先生に正直に、自分の思いを打ち明けることにした。



「実は僕、最初にブログを拝見させていただいた時から、
 先生のこと、あまり好きじゃなかったんです。

 それがなぜだったのか、今やっとわかりました。

 僕は、ファッションにこだわっている男性
 のことがあまり好きではなかったんです。

 それは何より、
 自分自身のことが好きじゃなかったからだと思います」




先生は俺のことをじっと見つめていた。俺は勇気を出して続けた。



「僕にとっておしゃれとは、自分の無能さを隠すための
 鎧のようなものでした。


 だから俺は、『自分は人とは違うんだ』ということを
 アピールするために、わざと誰にでも着こなせないような
 服を着ていたんだと思います。

 そのくせ、おしゃれをしている男性を見ると、
 きっとこの人も自分のように、
 『無理をして弱さを隠そうとしているんだな』
 と感じるので、苦しくなっていたんです。


 でも今、先生と初めてちゃんとお話しさせていただいて
 思いました。

 先生からは、その無理している感じや、
 苦しさを全く感じません。
 

 それはなぜなんですか?」




先生はにっこり笑ってこう言った。


「祐二さんのお気持ちはわかります。
 実は私にも、以前そういう時期があったんです。

 私の場合は、自分に対して感じる無価値感や、
 人に受け入れてもらっていないと感じる寂しさの反動から、
 『自分はここにいるんだぞ』という自己主張のつもりで
 服を選んでいたんだと思います。



 でもある時気づきました。
 自分のことをアピールするためにおしゃれをしていたら、

 もっと人が離れていって、もっともっと寂しくなるって。

 ですからその後は、個性的過ぎるファッションをやめて、
 どんな方からもとっつきやすい、
 柔らかい印象の服に変えることにしました。

 おかげさまで、
 今は周囲の方々から受け入れられているのを感じますし、

 私の中の無価値感も癒されています。


 だから祐二さんは私から、
 そういう苦しさを感じなかったんじゃないでしょうか」




俺は苦手だと思っていた先生が、自分の思いをわかってくれたことを感じてほっとした。





先生はさらに続けた・・・





第10話に続く

| 「おしゃれスクール物語」 | 09:51 | comments(0) | - |
兄貴の今の幸せがあるのはこの数ヶ月の学びのおかげではない、三年間続けてきた兄貴の
 




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「私はずっと、太一くんのこと、いい方だと思ってました。


  彼が、学校でいじめられてる同級生をかばっていたのも、
  近所のお年寄りを助けていたのも、ずっと見てきたんです。


  再会したとき、私にはこの人が必要だとわかりました。

  太一くんの彼女になることができて、本当に幸せです」






弟の俺から見ても、二人は全く違和感がなかった。

兄貴と百合子さんはとてもお似合いのカップルだった。






俺は思った。

百合子さんの隣に居てもおかしくないぐらい、
兄貴の男っぷりが上がったのは、間違いなく「おしゃれスクール」のおかげだ。


だが兄貴の今の幸せがもたらされたのは、たった数か月の学びのおかげではない。

三十年間続けてきた兄貴の誠意ある生き方を、見ている人はちゃんと見ていたのだ。



そして「おしゃれスクール」という小さなきっかけが、
兄貴の幸せへと繋がるボタンのスイッチを、最終的に押したのだろう。






兄貴には自覚が無かったのかもしれないが、
兄貴の中の深い何かは知っていたのかもしれない。


この時期に、百合子さんという素晴らしい彼女ができることを。




きっと兄貴は身も心もかっこよくなって、百合子さんを抱きしめたかったんだ。


そうか、だから兄貴はあの時、いささか強引に見えるほどの勢いで、
おしゃれスクールに行きたがったんだな。



良かったな、兄貴…。






俺の胸に感動が押し寄せてきた。それと同時に、自分の心のどこかに、
ぽっかりと穴が空いたのも感じていた。



今こそはっきりと認めることができた。俺は、兄貴に負けたと…。



今まで、一度だって負けたことなどないと思っていた兄貴。

傲慢にも、俺が心のどこかでバカにし続けてきた兄貴に、
俺はずっと前から完全に負けていたのだ。





その夜、俺は自分の部屋で泣いた。

敗北感とみじめさが涙になって溢れ、俺は歯をくいしばった。



だが感情の波が静まった後、ようやく覚悟を決めることが出来た。

俺もそろそろ、自分に向き合わなければならない時が来たのかもしれない。






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俺は、変わることができるのだろうか?


9話に続く

| 「おしゃれスクール物語」 | 16:52 | comments(0) | - |
自分の無能さを認めたくなかった俺はファッションに凝り、バンドを組んだ 第7話
 





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でも俺は自分の無能さを認めたくなかった。


それで、武器である見た目の良さを生かすためにファッションに凝り、

高校時代には、
ロックバンドを組んで女の子の注目を集めるという作戦に出た。


そして、卒業後の進路は何が何でも医大にこだわった。

俺は、誰からも「成功している人間」だと思われたかった。


そのために医者を目指したのだ。


合格するのに二年もかかってしまったのは誤算だったが、
なんとか俺は医大に滑り込んだ。


そんなわけで俺は、まだまだ「自分が定めた成功への道」から外れずに、

順調に歩み続けているつもりだったのだ。







しかし彼女に振られたことで、俺は焦っていた。

自分を支えていたプライドが、今にも音を立てて崩れていきそうな気がしていた。



俺の弱さやずるさは、
とっくにみんなの目にも明らかになってしまっているのではないだろうか?


俺はこの先誰かにきちんと愛される時が来るのだろうか?



兄貴は、自分のことをダメ人間だと言っている。

だが兄貴は自分のダメさを隠してはいない。



おしゃれスクールでなりふり構わず努力し、

自分のダメさを見つめることで何かを学び、

さらに成長しようとしている。





だから兄貴は俺よりもずっと勇気があるのかもしれない。

本当にダメなのは、実は俺なのではないだろうか?




そこから二か月間、俺はスクールに行かなかった。

勉強が忙しい、バイトが忙しいなどと、何かと理由を付けては休んだ。



反対に、兄貴の方はスクールにすっかり慣れて一人で通えるようになり、

俺なしでも楽しくやっているようだった。




そして兄貴の変化は周囲の目から見ても明らかだった。

ごく普通のシャツやパンツなど、何気ないシンプルな服を着ているだけなのに、

兄貴は少しずつ輝いていったのだ。




少しの変化はさらなる勇気を生むようで、
兄貴は大胆なことにも挑戦した。

学生の頃からずっと使い続けていたメガネを新しいものに変え、

散髪屋にしか行ったことがなかったのに、

ついには美容院デビューを果たした。





そうやって見た目が洗練されるに従って、

兄貴の優しい魅力もますます深くなっていくように俺には思えた。




そして秋の終わりの頃、今までの兄貴の頑張りが一つの実を結ぶように、

思いがけない幸せが訪れた。





兄貴に、人生初めての彼女ができたのである。


相手は、近所のイタリアンレストランのオーナーシェフの娘、百合子さんだった。




百合子さんは兄貴の同級生で、俺ら二人にとって、

幼いころからの憧れの女性だった。





彼女はテレビに出てくる女優さんにも負けないぐらい美人なうえに、

性格もとても可愛らしい。




またイタリアに留学し、料理を学んだ才媛でもある。

そのレストランで出される美味しい料理と、百合子さんの美しさは
以前から評判になっており、近頃では雑誌に何回も掲載されているほどだった。



そんな高嶺の花である百合子さんと兄貴は、一か月前に行われた同窓会がきっかけで
急に仲良くなり、なんと百合子さんの方から、兄貴に告白をしたのだと言う。




「俺、ほんまに信じられへんねん。人生に、こんな幸せなことってあるんやろか」


ある夜、百合子さんを家に連れて来た兄貴が、頬っぺたを赤くしてうつむいた。








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その横で百合子さんは微笑んで言った。


| 「おしゃれスクール物語」 | 16:51 | comments(0) | - |
数枚のシャツを持って汗を拭きながら試着室に消えて行った兄貴にどこか寂しい気持ちを感じた第6話






兄貴は最初、店に入る勇気をなかなか出せず、15分も躊躇していた。


入ってからも挙動不審にうろうろし、
店員さんと目が合ったらすぐ逃げようとしたが、

俺が見張っているのを思い出し、必死に思いとどまったようだ。



30分かかってやっと兄貴は、
「このシャ、シャ、シャツを試着させてください」
と言うことができた。



数枚のシャツを持って汗を拭きながら試着室に消えて行った兄貴に、
俺は少しバカバカしいような、ほっとしたような、
それでいてどこか寂しいような気持ちを感じた。



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さらに30分後、兄貴は汗だくになりながら店員さんと相談し、
ようやく自分にぴったりのサイズのシャツを購入することができた。

兄貴は意気揚々と店を出てきた。
そして、俺を見つけると、ショップの紙袋を振りながら自慢げに叫んだ。



「祐二!俺、3Lやなくて、なんとLやったわ!
  大きい方専用コーナーで買う必要、全然なかってん!」



その日の夜遅く、購入したシャツを大事そうに触りながら、兄貴はこう言った。


「自分を変えようと思ったら、まず自分とちゃんと向き合わないといかんのやな。

 兄ちゃん、今日それがわかったわ。

 実はな俺、子供の頃おかんに連れられて、デパートの子供服売り場で
 一度だけ試着したことがあってん。

 その時、試着室の中の鏡に映る太った自分を見て、あまりに醜く感じたのと、

 おかんが外から『どや?小さくて入らへんのか。
 入らへんかったら入らへんって言い!』って言ったのが、

 ものすごい屈辱的でな。二度と試着なんかするもんかって思ったんや。


 あんな思いするぐらいなら、絶対に入るでかいサイズを買っといたほうがましや
 と思ってな。



 でも、今日、試着室で見た自分の姿は、確かにかっこよくはなかったけど、
 そう悪くもなかった。俺やっと、少しだけ自分の外見を受け入れられた気がするわ」




兄貴はシャツを満足そうに抱えて、自分の部屋に帰って行った。

俺のちょっとしたいじわる心は、図らずも兄貴を大きく成長させてしまったのだ。


〜〜〜


兄貴はその日から、少しずついろんな店に買い物に行くことが出来るようになり、
おしゃれの勉強もますます熱心にするようになった。


反対に、俺の方はだんだんとスクールに足が向かなくなってしまった。


その頃の俺は、実は沢山の悩みを抱えていた。

もともとおしゃれスクールに対して気が乗らない俺だったが、

行き始めてから連鎖反応のように、さらに集中できない出来事が起こってしまっていたのだ。




ここからは少し、俺自身のことを詳しく話そうと思う。


おしゃれスクールに行き始めてすぐの頃、俺は彼女に振られてしまった。

自分のみじめさを隠したい俺は、そのことを兄貴や周りの人には言わなかったが、
実際はとても傷ついていたのだ。



二年間付き合っていた彼女は、別れ際に俺に言った。

「祐二くんはもっと自分に自信のある人かと思ってた。思ってたより卑屈なんだね」
と…。



俺は彼女に言われたことの意味がよくわかった。
俺はいつも自分に自信のあるふりをしてきたけれど、
その化けの皮がいつ剥がれるか、いつ剥がれるかと、怖くてたまらなかったのだ。

それを彼女は見抜いたんだと思う。

俺は幼い頃から「美少年」と言われ、大人たちの注目を集めてきた。

すべてにおいて要領が良く、わりと勉強もできた。

だから「どんくさく、かっこわるい兄貴とは違って、俺は有能だ」
といつも思っていた。


そう思うことで、自分のプライドを保とうとしていた。


だがそのプライドは、思春期になるころにはズタズタになっていた。

俺が進学した中高一貫教育の学校には、頭のいい生徒が沢山いた。

俺が一日かかって解く問題を、ものの数分で簡単に解くやつらがいた。


俺は否応なしに、自分の限界に直面させられたのである。




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7話に続く・・・

| 「おしゃれスクール物語」 | 05:54 | comments(0) | - |
それはとても変な光景だった、熱心に授業を受ける兄と、斜に構えている弟、、、5話



それはとてもおかしな光景だった。


月に二度、会社と大学の帰りの時間に待ち合わせ、
全く似ていない兄弟が机を並べるのだ。



俺らは習い事すら一緒に通ったことがなかったので、
その時間はなんとも照れくさく恥ずかしいものだった。



スクールの先生や生徒さんは、
時々俺らの方を見て微笑み、こう言った。



「森崎さんご兄弟は、本当に仲がいいですね」


そんな時兄貴はとても嬉しそうに言った。


「おかげさまで。こいつはいい弟なんですよ」



だが俺は何も言わず、ただ愛想笑いをしてその場をやり過ごした。






俺の予想に反して、「おしゃれスクール」は全然怪しくない場所だった。


カリキュラムはしっかりしているし、先生は優しい。

なんとなく僕が気に入らなかった主催者の先生の授業も、
とてもわかりやすいものだった。


もちろん、高い商品を売りつけられることも全く無かった。

しかし、俺はなにかが気に入らなかった。



俺の中の何かが、このスクールに順応させることを止めていた。



そんなわけで俺は、
いかにも、「兄貴の付添いで仕方なく来てやってます」というような態度を
あらわにし、授業中、筆記用具を持つことすらしなかった。

先生たちにとってかなりやりにくい生徒だったことだろう。
 


しかし兄貴は俺とは正反対の、実に素晴らしい生徒だった。


学生時代にもこんなに勉強したことはないんじゃないかと思えるほど、

とても熱心におしゃれを学んでいた。




先生の言うことを一言も漏らさないようにノートに取り、
授業の後も質問を何個もしていた。



スクールでは毎回、復習のための小さな宿題が出される。

兄貴はもちろん欠かすことなく宿題を頑張っていた。




一度もやろうとしない俺とは大違いだった。

 




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ある時、いつも頑張っている兄貴に、スクールの先生から特別の宿題が出された。

「太一さんは一度、ご自分にぴったり合ったサイズのお洋服を購入してみてください」


というものだった。兄貴はいつも3Lの洋服を着ていたのだが、
本当のサイズはそれより小さいだろう、
というのが先生の見解だったのだ。



 兄貴は俺に、
「この機会に、大型スーパーじゃなくて、ちゃんとした洋服屋で試着してみたいねん。
  祐二が行ってるお店、教えてくれ」


と頼んできた。


俺が「わかった」と言うと、

兄貴は「ありがとう!さすが祐二は頼りになるわあ!」と、大げさに喜んだ。




だが兄貴の嬉しそうな顏を見て、俺は少しイラっとした。


スクールを楽しめない俺は、おしゃれを学ぶことを素直に楽しんでいる兄貴に、

なんだかバカにされたような気がしたのだ。



だから俺は兄貴にいじわるをしてやりたくなった。

俺は言った。



「店に連れていってやることはやるけど、俺は助けへんで。

兄貴一人で試着して服を買うんやで。もう出来るやんなあ。

これだけ熱心におしゃれを学んでるんやから」





自分でもイヤミだなと思ったが、出てくる言葉を止められなかった。




兄貴は、

「そ、そうやな。そ、そろそろ自分で頑張らんとな」と、
動揺しながらも覚悟を決めたようにうなずいた。




次の日曜日、僕は兄貴を自分の馴染みの店に連れていった。


兄貴はシャツが欲しいと言ったので、シャツの品ぞろえが豊富な店を俺は選んだ。


いじわるな俺は、そこで兄貴を放置して、自分は店の外でぶらぶらしながら
様子を見ることにした。



6話に続く


| 「おしゃれスクール物語」 | 23:18 | comments(0) | - |
別に特別におしゃれとかなりたいんやない!人に迷惑をかけてるかもしれんのや 4話



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「俺は変わりたいんや。

今まで俺は、とにかく自分の外見に自信が無かった。


だからどんな勉強をするよりも、おしゃれになることが
一番俺の人生を変えると思うんや。



でも『おしゃれスクール』なんて、考えただけでも恥ずかしくて、
とても一人で行く勇気がない。


俺なんかが行ったら、あまりにレベルが低過ぎて、
きっと先生にバカにされるわ。だから祐二、一緒に行ってくれ。頼む!」




それを聞き、俺の口から出てきたのは、自分でもびっくりするほどの強い言葉だった。


「あかん!絶対行ったらあかんって!いいか兄貴、バカにされるだけちゃうで。

きっと騙されるで。兄貴がこんなとこ行ったらな、
こいつはファッションのことなんて何もわからんと思われて足元見られて、
バカ高い洋服とか売りつけられるんや。絶対近づいたらあかん!」




だが兄貴は引かなかった。



「だからお前に頼んでるんやんか。
お前なら洋服の知識もあるし、喋るのも上手だから、
もし変やと思ったらすぐ断れるやろ。


もし兄ちゃんが危なくなったら助けてくれ。頼む!」



「あかん!俺は嫌や!」

「頼むって!」

「だいたいな、おしゃれなんて学ぶもんちゃうねん。感性でするもんやねん!」




「でもこのホームページに、おしゃれの感性を開花するには、
まず『理論』がいるって書いてあるねん」



「そんなん、客を呼び込むために上手いこと言っとるだけや。
話にならん。俺はもう寝る!」



俺は、強引に自分の部屋に行こうとした。しかし兄貴は、驚くべきことをした。
なんと俺の行く手にふさがったのだ。

大人しい兄貴がこんなことをしたこと、今までにあっただろうか?

兄貴は再び頭を下げた。



「兄ちゃんな、ある意味、おしゃれになられへんでもええねん。
ただ、『おしゃれは相手へのおもてなし』っていうことが
どういうことか知りたいんや。


俺は今まで、どんな時でも、人のためになるような生き方をしたいって願ってきた。

それが兄ちゃんなりの『おもてなしの心』やったかもしれん。


なのに今回、服装があかんということだけで、
人に迷惑をかけているかもしれないって思った。


俺はこれ以上誰かに迷惑をかけたくない。



だから『おしゃれ』でどうやっておもてなしをするのか、教えてもらいたいんや」





兄貴は真剣だった。俺は兄貴の今までの生き方を思い返した。

たしかに兄貴は人のことばっかり考えて生きてきた。





小学校の頃、クラスにいじめられている友達がいたが、


兄貴だけはいつも味方になってあげていたそうだ。



中学の頃は、学校から帰ると、近所のお年寄りの手伝いをするため、
カバンを置いてすぐにまた出かけて行った。



大人になった今だって、兄貴のことを慕って、

会社の後輩がしょっちゅう遊びにやって来る。




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要領良く人付き合いをすることはできないが、
一度知り合った人のことはとことん大事にする、
それが兄貴という男なのだ。




そんな彼の一世一代の願いを、簡単に断わるなんて弟じゃない。





いくら自分勝手な俺にだってそれはわかった。


だが俺は本当に気がすすまなかった。



自分のセンスでおしゃれをしてきた俺にとっては、

「おしゃれスクール」なんてものが存在する意味すらわからない。



そして主催者のこともどことなく気に入らなかった。

なのでわざと顏をしかめ、最大級に面倒くさそうなふりをしてやりながらこう言った。



「もちろん授業料は、俺の分も兄貴が払ってくれるんやな?
だったら特別に行ってやってもええ」



俺の予想したとおり、兄貴は、パっと顏を輝かせた。

そして子供のように嬉しそうな顏をしてうなずいた。

こうして、俺たちのおしゃれスクール通いが始まった。







5話に続く

| 「おしゃれスクール物語」 | 23:14 | comments(0) | - |
兄貴から信じられない頼みをされた、兄貴はさらに畳に頭をこすりつけた 3話
 

 



兄貴が洋服のことを言いだすなんて全く珍しい。

お人良しでいつも人の影に隠れ、親戚の人たちにさえ、

「祐二くんのお兄ちゃん」と呼ばれてしまうほど、影の薄かった兄貴である。


カッコつけるだとか、目立とうとする、なんていう言葉は、
兄貴には一番似つかわしくない言葉だった。

よって、兄貴の辞書には、ファッションの「ファ」の字も無かったと思われる。


だが人は、変わりたいと真剣に願う時があるのかもしれない。

何かが心の内側のドアを叩き、強引に、今までの自分と違う行動を
とらせようとする時があるのかもしれない。



その時の兄貴は、およそ兄貴らしくない大胆さで、自分の人生を変えようとしていた。





兄貴はその夜帰って来て晩御飯を食べた後、珍しくパソコンと向き合い、
長い間インターネットを見ていたらしい。



俺は10時ごろバイトを終えて帰宅し、すぐ自分の部屋に行こうとした。
だが兄貴に呼び止められた。



「祐二、悪いけどこっちに来てくれへんか」


俺が兄貴のところに近づくと、兄貴はあるホームページを指さした。

「なあこれ、どう思う?」



それは「LUCEおしゃれスクール」というホームページだった。

これが、俺とおしゃれスクールの、最初の出会いだ。



「おしゃれスクール?なんやねんそれ」

「実はな、朝言ってた先輩に聞いてん。『どうして先輩は、
 洋服を選ぶことは相手へのおもてなしだと気づいたんですか?』って。

 そうしたら先輩、このスクールのこと教えてくれてん。先輩はこのスクールに
 行き出してから、おしゃれになっただけじゃなく、自分に自信が持てるようになって、
 奥さんともラブラブになって、更に営業成績も上がったんやって」



「うそやん!そんなにうまいこと行くわけないわ」


「ほれ見てみ。主催者のブログにも書いてあるわ。
  『ファッションは、相手へのおもてなしです』って」



俺はそのブログを読んでみた。それは、そのスクールの主催者である男性が、
自分の伝えようとしているおしゃれについて様々な角度から説明しているブログだった。

しかし、なぜか俺は、その男性のことが好きになれなかった。
俺の中の何かが、この人のことを信じさせることを止めていた。



「あかんわ、兄ちゃん。俺この人嫌いや」


「そうか?俺は、けっこういい事書いてはるって思うけどな」


兄貴は、わかりやすくしょんぼりした。俺は何か嫌な予感を感じ、
わざとふざけた調子でこう混ぜっ返した。


「なんや兄貴。もしかして、その『おしゃれスクール』に通いたい、
  なんて言うんとちゃうやろなあ!」




すると兄貴は突然、はじかれたように土下座をしたのだ。


「お願いや祐二!この『おしゃれスクール』に一緒に行ってくれ!」


「はあっ?!何言うてんねん」


予想を超えた展開だった。兄貴だけならまだしも、
なぜ俺までそのスクールに行かなくてはならないのだ。

だが兄貴はさらに畳に額をこすりつけた。





パーソナルスタイリスト土居コウタロウ




4話に続く


| 「おしゃれスクール物語」 | 23:13 | comments(0) | - |
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